2017年6月20日火曜日

『私はサラリーマンになるより、死刑囚になりたかった』

松本博逝『私はサラリーマンになるより、死刑囚になりたかった』(ロックウィット出版、2017年)はニートを主人公とし、ニートの心理構造を描いた小説である。主人公はニートであって、引きこもりではない。ニートと引きこもりは混同されるが、同じではない。主人公は家から出られない心理的制約がある訳ではない。引きこもりではないのにニートである点は感情移入しにくい要素である。

序盤は会社人間(社畜)の生き方に適応できないニートの意識が語られる。ここは理解できる。私も子どもの頃の「モーレツ社員」「24時間働けますか」という労働環境に嫌だと思ったものである。だから主人公がブラック企業を否定する点(97頁)は心地よい。「サイレントテロ」という言葉があるが、ニートこそ日本の会社主義を打破する思想と考えたくなる面もある。

一方で主人公に感心できない面は酒で紛らわせていることである。二次元の世界に入り浸る現代のニートとギャップを感じる。働かず昼間から酒浸りになる人生の落伍者は過去にも一定数存在した。主人公は、それと変わらなくなる。主人公自身、そのような自覚を有している(98頁)。

さらに悪いことに主人公は「酒で満足できなければ、薬物」というルートも見据えている。それは「便所の底の底、つまり下水管の糞だめへと転落する事になる」と理解しているが(99頁)、危険ドラッグ(合法ドラッグ)を否定しきれない弱さも持っている。このようなものがニートならば、会社主義に対するオルタナティブな生き方として評価できない。

この点で私は主人公に対して否定的であり、本書をニート論として位置付けるならば、それが本当のニートではないと主張したくなる。しかし、これは物語として読む上で本書の欠点ではない。批判できる主人公だからこそ本書のような展開があり得る。逆に共感できる主人公が本書のような結末に至る方が大変である。
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