2017年4月1日土曜日

映画『Dave』

『Dave』は1993年に公開された米国の政治コメディ映画である。アイヴァン・ライトマンが監督、ケヴィン・クラインが主演した。大統領とそっくりな容姿を持つ男が影武者を演じる物語である。チャップリンの『独裁者』を想起するが、ハートフルタッチの作品である。

公開当時の米国の大統領はビル・クリントンであった。映画の大統領もビルである。映画にはモニカ・ルインスキー事件や金権スキャンダルに重なる描写があり、21世紀のテン年代から振り返ると一層クリントンのイメージを強くする。ファーストレディーを演じるシガニー・ウィーバーは『エイリアン』のリプリー役で有名である。『Dave』では知的なファーストレディーを演じている。

庶民感覚を持った人物が大統領と入れ替わり、政治に良い影響を与えていく。福祉のための予算捻出では二つの案が提言される。第一に進捗のない工事代金の支払いの停止である。これは日本の無駄な公共事業の中止と重なる。

第二に国産車販売促進のための補助金である。これは一見すると消費者向けの施策に見えるが、実は自動車メーカーの支援策である。主人公は「自動車を買える国民よりも、ホームレスの子どもを助けることに予算を使いたい」と主張する。

これは日本でも重要である。たとえば日本の住宅政策は住宅ローン減税など持ち家優遇か公営住宅に偏っているが、本当に困っている住民は民間の賃貸住宅の賃借人である。住宅ローン減税は住宅購入者支援に見せかけて、マンション分譲業者や金融機関を儲けさせる施策ではないか。

日本は再配分後の方が格差は拡大しているとの指摘さえある。貧しい人から税金を取り、既得権保持者に配分する不公正が起きている。誰のために税金を使うかという優先順位を考える必要がある。

映画では主人公がワシントンの政界の人間も魅了していく。この点はトランプ現象やサンダース現象が象徴するように、エスタブリッシュメントと国民の断絶が明確なテン年代から見ると牧歌的に見える。現代ならば主人公の敵はもっと多くなるだろう。

主人公が打ち出した政策には驚かされる。映画内では議員や評論家の賛否両論を紹介するが、主人公に打ち出させる点で映画制作側は好ましい政策という価値判断を有している筈である。しかし、現代の政治常識に当てはめるならば批判一色になりそうなものである。

国家が何らかの財の供給に責任を持つことは市場原理の否定であり、その種の発想にはソ連のような体制に対するものと同じような嫌悪感を覚える。この点は米国では日本以上に厳しいというイメージがあるため、この映画で良い政策と好意的に描かれていることに驚かされた。
http://www.hayariki.net/poli/sanyo2.html
私は映画公開後の20世紀末に高等教育を受け、新自由主義的な社会科学に触れている。そのために主人公の政策は政治常識的にあり得ないと感じてしまうが、20年前はそれ程あり得ない考えではなかったかもしれない。実際、米国では映画公開の翌年の1994年に共和党が議会を制し、ギングリッチが時の人になる。それに対応してクリントン政権も財政赤字削減などを重視していく。その意味では『Dave』はリベラルが完全に退潮する前の最後の時代の作品と言えるかもしれない。
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