2016年11月5日土曜日

環状道路を作るという需要がない

需要変動リスクの最後に根本的な問題として、日本には環状道路を作るという需要がないことを指摘します。国土交通省は「海外の主要都市では環状道路が整備されている。だから東京にも外環道が必要」という論理に立っています。
たとえば国土交通省関東地方整備局のWebサイトでは「諸外国の環状道路」というページで以下のように書いています。
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日本と欧米諸国の環状道路の整備状況は大きく異なっています。
欧米では、多くの都市で環状道路の整備が進められ、ロンドンでは100%、パリ、ベルリンでは約90%の整備が完了しています。
また、アジアの主要都市でも環状道路の整備が進められ、北京、ソウルは東京圏を大幅に越えて整備が完了しています。
こうした東京圏の整備スピードの相違要因には、地理的条件をはじめ、道路整備手法や制度、歴史的背景等の違いが挙げられます。
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引用を終わります。しかし、国土交通省関東地方整備局自身が述べているように日本と海外では地理的条件や歴史的背景が異なります。よって海外の都市で環状道路が整備されているから、日本の都市でも環状道路を整備すべきとはなりません。
たとえば北京の環状道路が例示されますが、北京の環状道路は交通渋滞や大気汚染を解決していません。喜多見ポンポコ会議の2013年3月1日付報道発表「オリンピック開催地の交通事情から「東京を北京にしたいんですか?」」は以下のように指摘します。
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北京では幾重もの環状高速道路を建設しながら渋滞はなくならず環境は悪化し続け、ロンドンは唯一の環状高速道路(M25)の開通で本線および周辺道路の渋滞や環境悪化を招いたため環状道路計画を廃止していることが分かりました。
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引用を終わります。
海外の都市で環状道路が作られる理由は、城郭都市として発展した歴史にあります。海外の都市は都市の周りを城郭で囲んでいました。都市が城でした。ドイツに何々ブルクという町の名前が多いのは、このためです。これはヨーロッパも中東も中国も同じです。現代の都市は城壁の代わりに環状道路を通していると考えれば分かりやすいです。
ところが、日本は小田原城総構えなどの例外を除き、城郭都市の歴史を持ちません。日本が海外と比べて環状道路が支持されないことは、日本の歴史に見合ったことです。
雑誌『地理』2016年10月号82頁の中家(なかいえ)恵二、今村遼平、上野将司、長田真宏の記事「天山山脈の"天空の草原"」は以下のように指摘します。
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30年ほど前、当時の北京空港から北京市内へのメインストリートに、片側だけでも三列の並木がずっと続いていてすばらしいと思ったことを思い出す。中国にはこの並木のように、古くからマスとしての造形美を造る伝統がある。その点では日本と違って、欧州に近い美的感覚を好むように思われる。
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引用を終わります。ここで指摘されているようにヨーロッパにも中国にも地図の上に線を引き、その通りに街を作ることに美を感じるイメージがあります。これに対して日本の街は自然発生的に作られたものが多いです。
この日本の特殊性は素晴らしいものです。日本の街が、権力者が机の上で考えた街の形の押し付けではないことを意味します。個々の住民が住みやすいように個別最適したものの集合が都市になるという点で住民本位の街と言えます。
戦後の日本では進歩派やリベラル派と言われる人々にマルクス主義の影響が強く、権力者の都市計画に対し、プロレタリア階級の都市計画で対抗しようとする傾向がありました。しかし、上から目線で都市計画と言っているうちは、いくら主観的には庶民のための都市計画と思ったとしても実際の住民の思いとは乖離してしまいます。戦後日本の進歩派の街づくり分野の弱さは都市計画本位の発想にあると考えます。
外環道も地図の上から線を引く計画というドグマに囚われていると、環状道路があった方が都市として美しいという発想から抜け出せません。それは日本の歴史的背景とは異なる思想です。居心地が良いと感じる場所は、人間の目線レベルにある路地のような場所です。実際に住んでいる住民本位の街づくりの立場から外環道の見直しを求めます。

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■ 林田力 Hayashida Riki
■■ 『東急不動産だまし売り裁判』著者
■■◆ http://www.hayariki.net/

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