2016年11月17日木曜日

『お金持ちのための最強の相続』

田中誠『お金持ちのための最強の相続』(実務教育出版、2016年)は相続についての書籍である。著者は相続専門税理士である。本書は駅伝式相続法を提唱する。相続を駅伝(リレー)、相続財産を「たすき」に見立てる。被相続人だけが頑張っても成功しない。残す側と受け取る側がリレーのように協力し、たすき(相続財産)を渡し続けてこそ成功すると指摘する。

この指摘に共感する。相続に関する書籍は被相続人に向けたものが多い。これは相続対策を遺言書で終始させる傾向がある。しかし、相続の主体は相続人であり、現実には遺言書だけで解決しないことが多い。逆に死後初めて分かるような遺言書で相続対策できると考える方が目出度い。残す側と受け取る側双方の協力を必要とする本書の視点は正しい。

一方で相続には駅伝と違う点がある。駅伝は一人が一人に渡すが、相続は渡す相手が複数人いる場合がある。どう分けるかが問題になるし、それが相続紛争に発展する。本書は税理士が著者であり、相続税対策がメインである。「どう分けるか」は主題ではないが、それでも事業承継をする長男の総取りとさせないなどの一定の公平さを有している(49頁)。

本書は銀行や不動産業者、保険会社などの相続ビジネスの問題を指摘する。これら相続ビジネスをヤジと言い切る(第2章「「沿道のヤジ」に振り回されると資産を失う」)。正直なところ、私は相続のハウツー本に胡散臭さを抱いているが、このような記述があることは信頼できる。

相続対策の不動産経営は社会問題になっている。賃貸経営のための集合住宅の建築費が普通の建物と比べて割高であることは聞いていたが、本書は「統一されたブランドなので、市場価格の何倍もの建築費用がかかる」と指摘する(66頁)。普通の工業製品ならば規格化によって生産コストを下げる。ところが、賃貸住宅は逆になる。建築不動産業界の暗部を確認した。
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